
このたび新たに常用漢字に登録された漢字(五木寛之さん直筆)
氷見の市民会館で今晩、作家の五木寛之さんの講演会が開かれました。主催は親せき寺院の光照寺さんで、お便りをいただいた時は本当に驚きました。演題は、「親鸞聖人の情(こころ)」。約800人の方が聴講に集まられたとのこと。最初に最近、金融証券関係、社会福祉関係、医療関係のこれまでご縁のなかった分野の方から講演依頼が多いというお話をきっかけに、今の日本社会の異常な状態をお話しになられました。社会全体が、見えない戦争を行っている戦時下であるという表現がこころに響きました。また、自殺者の問題にも触れられる中、12年続いたベトナム戦争でのアメリカ兵死者が6万5千人という数を引き合いに出され、2年でその数を上回る自殺者がいるということは、生きるよろこびを見いだしにくい社会に私たちは今生きているという認識をしっかり持つことの大切さを語られました。
今、なぜ私にとって親鸞聖人なのか。その問いに、自らの戦争体験をもって語られ、他の命を蹴落としても自分が生き残ってきたという罪悪感が五木さんの親鸞聖人との出会いの原点であり、その罪業の意識をそのまま引き受けながら生きていいのだという道を教えてくださったのが親鸞聖人なのだとお話しされました。今の時代は、親鸞聖人が生きられた時代と似ているところがあるので、蓮如上人の御文章とか、親鸞聖人の和讃を机の上で読んで批評するのではなく、声を出して読みそれを耳で聞くことの情(こころ)の世界を大事にしたいとしめされました。
まだまだ鋭い視点ではっとさせられたことが多くありましたが、今夜、五木さんのお話をお聞きできたことが大きな慶びでした。
明日は午後から帰真慶讃法要です。

入道家の仏間にて
砺波市の太田地区で毎年各家を巡回している女性のお講「尼講」に招かれお参りしてきました。今回のお宿は、ご門徒の入道さんのお宅。お屋敷が富山県の重要文化財にしてされている砺波地方のアズマ建ちの代表的なお家です。ほとんどの皆さんは、大谷派の門徒さんたちということもあり、本願寺派の経本を持参し、お配りしていっしょにおつとめしました。
この尼講には、親鸞聖人のご木像があり、お厨子とともに巡回しているそうです。今日は善興寺から「安城の御影」をお連れして床の間にお掛けし、「親鸞聖人ちゃどんな人?」と題してお話ししてきました。
今日は、入道家をぜひ見学したいということで総代の松下さんに車で連れて行っていただき、お講の帰り道、砺波市美術館へ寄って、先日お知らせした「人間国宝 濱田庄司の陶芸」を鑑賞してきました。昨日と今日、砺波、南砺市を会場に「日本民藝協会全国大会」が開催され、その会期の最終日にあわせて浜田庄司展も閉展となる最終日に訪れたのです。
学生時代、河井寛次郎さんの窯跡に建った河井寛次郎記念館の近くにすんでいたため、何度も河井寛次郎さんの作品には親しんできましたが、浜田庄司さんの作品は釉薬の色合いが絶妙だと思いました。形は基本形がありますが、1万以上もの釉薬の研究をされていたというだけあって、こころを自然体にしてくれる色だなと思いました。
拝観後、館長室へお邪魔して小西館長さんと談笑。11月に予定しておられる「真宗の風土展」の担当の学芸員の方ともお会いできました。とにかく、今日は砺波地方の佛縁をいただいた日でした。

葬行事所から眺める運源寺の大カエデ(樹齢約350年)
近隣のお西のお寺、運源寺さんの住職がご往生され、ここ数日間、葬儀に関わるお手伝いの役「葬行事」に携わっていました。悲しみに暮れる間もなくご家族をはじめ、ご親戚、ご門徒の皆さんは矢継ぎ早に準備をしなければならないことがあり、その中で一役を仰せつかりました。近隣のお寺さん方と一緒に法要の準備をしていく中で、死を悼み、人生を閉めくくる節目の儀式は、大変だけれども、いろいろな方のお世話とお手伝いがあればあるだけ意義深いものになるのではないかと思いました。何から何までお金で済ませるのではなく、ひとつひとつの準備に携わることで、亡き方との別れの意味を多くの方と分かち合えるのではないでしょうか。

砺波市福岡の嚴照寺さんで今日、鐘楼堂の新築落慶法要と親鸞聖人750回大遠忌法要が勤修され、お参りに行ってきました。午後から行われた庭儀(ていぎ)では、稚児行列があり、賑々しい雰囲気のなか滅多に遇えないご縁に感謝。10月の善興寺での大遠忌法要の前に数ヶ寺で勤修されますので、いろいろと参考にさせてける部分もあり、有意義な時間でした。
法要の最後に千秋楽という雅楽の演奏があるのですが、その音色を聞いていると、この法要に携わられたすべての人々のご苦労や慶びを感じさせていただきました。お疲れさま、そしておめでとうございます。
夜、10/15のイベント「真宗落語」の準備会「イベント部会」の集まりがあり、チラシ、チケット、ポスターなどの原案が発表されました。デザイン担当の方の多大な努力ですばらしいものになりました。内容などは近日お知らせしますが、みんなで準備していくことの大切さを食事をともにしながら噛み締めました。力を合わせて成功させましょう。


講義でお話する尾角光美さん
先日、真宗大谷派の第33回北陸連区差別問題研修会に参加しました。テーマは「世をいとうしるし」-自死(自殺)の問題を通じて学びあうーでした。
4月から毎日新聞で「変える—社会起業的生き方」という連載記事があり、そのなかで尾角光美さんが紹介されていました。尾角さんは、若き社会起業家たちの登竜門のビジネスプランコンペ「edge」の最終選考会で優秀賞に選ばれた方です。お母さんが自らいのちを絶った苦悩のなかから、肉親らを失った人たちを寺院や葬儀社と協力して支える「グリーフ(悲嘆)サポート」という新事業に乗り出したのです。「Live on」(リヴオン)という団体を立ち上げ、グリーフケアをビジネスとして形作ろうとしています。ビジネスというと、「儲け」を追求するものというイメージが強く、まだまだその目的は分かりにくいかもしれませんが、社会の苦悩や問題を解決することこそがビジネスであるという思想が社会起業家を生んでいるのです。
社会起業家とは、利益だけを求めるのではなく、社会で本当に必要とされる仕事、福祉、教育、地域など、国や行政が対応できない社会的課題を解決する為に従来にない手法で経営する人のことをいい、1980年代、アメリカ人のビル・ドレイトンさんが社会起業家を発掘、サポートする財団「アショカ財団」を設立、世界中に2000人以上の社会起業家が門下生として活躍しています。これまでの経済至上主義から、人々がともに幸せになれる仕事を求めている人々が急速に増えているのです。
尾角さんは、自死・自殺の問題を正面から受け止め、自殺遺児の立場から遺族へのケアを模索している社会起業家といえるでしょう。
西本願寺では、全寺院に自死・自殺のアンケート調査を行い、宗派としてこの問題に取り組む試みが始まっています。尾角さんも協力し、近親者をなくした人らを精神的に支援する京都自死・自殺相談センターの設立を準備しています。新聞記事で読んだいくつかの記事に導かれ、そして大谷派の友人に誘われ、この研修会に参加しました。残念ながら所用ですべてを聞くことはできなかったのですが、「ここにいらっしゃる皆さんとつながることが私の活動の目的」という言葉が尾角さんを表していると感じました。20代、30代の自殺率が過去最高となった今、目を背けてはいけない現実なのだと教えていただきました。