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世をいとうしるし

By , 2010年5月27日 7:50 pm

講義でお話する尾角光美さん

先日、真宗大谷派の第33回北陸連区差別問題研修会に参加しました。テーマは「世をいとうしるし」-自死(自殺)の問題を通じて学びあうーでした。

4月から毎日新聞で「変える—社会起業的生き方」という連載記事があり、そのなかで尾角光美さんが紹介されていました。尾角さんは、若き社会起業家たちの登竜門のビジネスプランコンペ「edge」の最終選考会で優秀賞に選ばれた方です。お母さんが自らいのちを絶った苦悩のなかから、肉親らを失った人たちを寺院や葬儀社と協力して支える「グリーフ(悲嘆)サポート」という新事業に乗り出したのです。「Live on」(リヴオン)という団体を立ち上げ、グリーフケアをビジネスとして形作ろうとしています。ビジネスというと、「儲け」を追求するものというイメージが強く、まだまだその目的は分かりにくいかもしれませんが、社会の苦悩や問題を解決することこそがビジネスであるという思想が社会起業家を生んでいるのです。

社会起業家とは、利益だけを求めるのではなく、社会で本当に必要とされる仕事、福祉、教育、地域など、国や行政が対応できない社会的課題を解決する為に従来にない手法で経営する人のことをいい、1980年代、アメリカ人のビル・ドレイトンさんが社会起業家を発掘、サポートする財団「アショカ財団」を設立、世界中に2000人以上の社会起業家が門下生として活躍しています。これまでの経済至上主義から、人々がともに幸せになれる仕事を求めている人々が急速に増えているのです。

尾角さんは、自死・自殺の問題を正面から受け止め、自殺遺児の立場から遺族へのケアを模索している社会起業家といえるでしょう。

西本願寺では、全寺院に自死・自殺のアンケート調査を行い、宗派としてこの問題に取り組む試みが始まっています。尾角さんも協力し、近親者をなくした人らを精神的に支援する京都自死・自殺相談センターの設立を準備しています。新聞記事で読んだいくつかの記事に導かれ、そして大谷派の友人に誘われ、この研修会に参加しました。残念ながら所用ですべてを聞くことはできなかったのですが、「ここにいらっしゃる皆さんとつながることが私の活動の目的」という言葉が尾角さんを表していると感じました。20代、30代の自殺率が過去最高となった今、目を背けてはいけない現実なのだと教えていただきました。