本堂耐震補強工事完工

By , 2020年12月24日 12:16 am

昨年1月より、門徒で建築家の坂井修一さん(坂井建築事務所)に依頼して、本堂の現状調査と耐震診断を行なっていただきました。坂井さんはこれまで全国各地の震災地を大学教授をはじめとする専門家と訪れ、建物の被害状況を調査する活動に従事してきた「構造計算」のエキスパート。その経験を生かして本堂の地震に対する耐力がどの程度なのかを綿密に調べていただきました。
その結果、現在の本堂は震度5強の地震が発生した場合、大破から倒壊する可能性があることが判明しました。現在の耐震基準(震度7で倒壊しない)に満たない現状に対し、耐震力を向上させる方法はないか、「限界耐力計算法」という方法で検討した結果、制振装置(ダンパー)を設置して地震エネルギーの減衰を目的とする制振工事を採用することになりました。
具体的には、柱を受けている礎石面をコンクリートで拡大し、柱が礎石から落ちないように施工。そして大柱の床下の東西南北に新たな梁材を追加することで補強し、仕口に鋼鉄製の「仕口ダンパー」を百個近く設置することによって、床下から伝わる地震エネルギーを吸収し、建物全体への被害を軽減する工法です。
これまでに行なった調査内容は、①本堂の構造調査と構造図作成、②ボーリングによる地質調査、③構造部材の劣化調査、④富山県西部の断層と予想される最大震度について(善興寺に隣接する活断層「砺波平野断層帯西部・東部」では、今後三十年間に地震が発生する可能性が、高いグループに入ることになったと平成二十一年に地震本部が発表。〈最大予想震度は、東部でM7・0、西部でM7・2、呉羽断層帯はM7・4〉)です。
以上の調査をもとに工事計画が立てられ、(株)ダイエー商事さまに基礎工事を、(株)宮丸木材さまに木材の調達を、そして門徒の大工さん方に木工事とダンパー設置をお願いしました。
9月17日には、本堂にて「起工式」を行い、現在基礎工事が終了、現在大工さん方が床下で補強材を設置する作業を行なっており、年内には完成の予定です。
また、来年には今年境内地から伐採した杉を利用して外壁の改修工事を、そして2年後には井波の南部白雲木彫刻工房さまに依頼して妻壁の改修工事を予定しております。これらは、2023年6月に勤修予定の、善興寺が浄土真宗に改宗して五〇〇年、宗祖親鸞聖人ご誕生八五○年、立教改宗八〇〇年の記念法要に向けた記念事業として進められていきます。

つづき
9月下旬より進められていた「本堂耐震補強工事」が12月末に無事完工いたしました。工事に携わってくださいました関係各位には、心より御礼申し上げます。
特に大工さん方には、各現場を抱えているなか、スケジュールを調整してご尽力いただき、設計どおり、正確で迅速な仕事を行なっていただきました。「久しぶりに鑿と金槌を使う仕事をさせてもらいました」と、最近の現場では、習得された大工技術をほとんど使うことがなくなっているお話など聞かせていただきました。
要の仕口ダンパーも予定通り、九十六個適切に設置され、メーカーに報告書も提出されました。
12月1日には、金沢大学の建築の先生と大学院生が来寺して、特別な装置で「常時微動測定」をしました。これは、体感できない地盤の微妙な振動が建物にどのように伝わっているかを測定するもので、工事前と、工事後のデータと比較することで、構造的にどのくらいの耐震力が向上したかを知ることができるものです。
今回の工事は、富山県初の事例で、設計された坂井修一さんは、当初から本堂を研究対象としても詳細に調査し、結果を論文にまとめて建築学会に提出される予定になっています。測定結果は大学で詳しく解析され、来春に明らかになる予定です。
これで、明治時代に先人たちの筆舌に尽くせない苦労によって、今日まで護持されてきた本堂が、伝統技術と現代技術によって生まれ変わりました。外見はほぼ変わりませんが、地震に対して強靭な建物になったのです。
各地で地震が頻発しておりますが、安心してお参りいただける環境が整いました。これからも仏法聴聞の道場として、参拝し、大切にしてまいりましょう。










コメントをどうぞ